Treasure

 

感想文 : 『奴隷 I 種』

 

「奴隷 I 種」 作者:神沢 青さま (URL
ライトファンタジー ◇ [長編][連載中][シリアス]
自分より身分の高い者に命じられれば、奴隷として仕えねばならない。容姿端麗をもって仕える愛玩用の I 種。身の回りの世話をする家隷の II 種。肉体労働のために使役される最下級の III 種。それがこの作品の世界観の主軸となる設定である。
主人公は、白い鷹を皇帝に献上するために帝都を訪れ、その美貌ゆえに I 種奴隷として召し抱えられた狩人の少女、サイファ。そして、皇帝の実孫でありながら、やはり I 種奴隷として求められ、滅私の忠節を尽くす少年、ユウザ。「奴隷 I 種」は、この二人の恋愛をめぐる物語だ。
まず、奴隷が主人公の話という紹介文から、暗くて、悲惨で、ど〜んより、みたいな内容を予想したのだが、実は全く違う。爽やかで、健康的な作風の小説である。
ヒロインのサイファは、男勝りの性格だが、郷愁に悩み、毎夜脱走を企てては、ユウザに見つけだされて連れ戻されるという日々を送っている。見かねたユウザは、皇帝にサイファの帰郷を願い出て、許しを得る。そして二人は他の供たちを連れて、サイファの故郷である辺境への旅を始める事になる。その道中、二人はお互いを知り、信頼と友情を寄せ、それがやがては愛へ……という内容。
背景となる世界観も、よく作り込まれていて安定している。まったくの架空の異世界であり、魔力を持った石や、本当に空を飛ぶ天馬の馬車など、ファンタジーならではの要素が数々登場するが、その空想的な要素を裏打ちしてリアリティを発揮させるものとして、現実の神話伝説、文化などを上手く研究して採用されていると思う。
恋愛ものであり、ライト系作品ということで、世界観や設定などは添え物的にさらりと登場してくるだけだが、そういった部分もきちんと作り込まれている感があるのが好印象で、作品全体に、地に足のついた安定感を与えている。
甘く優しい中にも、現実の哀切さと厳しさがある、そういう作風。一読してみることを強くおすすめする。
《若葉さん支援の蛇足》

改良して欲しい点、特に無し。
(03/05/16)
△読むなら >>
http://celesteblue.main.jp/works/novel/slave1/
 

 

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Novel Wood ※2008年3月末で閉鎖なさいました。 zero-zero 様 / [ 2003.05.16 ]
“Novel Wood”、「勝手に感想文」より